ANAの国際線における新制度である「Bid My Price」が4月17日より開始されました。Bid My Priceとは、エコノミークラスのフライトを有償で購入した方を対象に、プレミアムエコノミークラスへのアップグレード券をオークション形式で販売する制度です。
以前から利用できた、マイルやアップグレードポイントを使ったアップグレードは、もともと購入するチケットがアップグレードに対応した予約クラスを購入していないと利用できません。一方で、Bid My Priceでは現時点で公開されている情報をもとにすると、もとのチケットの予約クラスに関係なくアップグレードの可能性がある、ということで期待できる内容となっています。
Bid My Priceについて
アップグレードに関する背景
エコノミークラスからプレミアムエコノミークラスへのアップグレードをオークション形式で購入することができる制度です。今までは、マイルやアップグレードポイントを使ったアップグレードは、
- エコノミークラスからビジネスクラス
- プレミアムエコノミークラスからビジネスクラス
- ビジネスクラスからファーストクラス
のみであり、「エコノミークラスからプレミアムエコノミークラス」のアップグレードはありません。
一方今まで、プレミアムエコノミークラスへのアップグレードは、ANAやスターアライアンスの上級会員に対して、チェックイン時に空席がある場合に限り、プレミアムエコノミークラスへの無償アップグレードを提供していました。
航空会社としては、「利益確保のために出来る限り有償で座席を売りたい」という意向があるため、今回の新制度の実施に踏み切ったものと思われます。近年、修行して上級会員を目指す人が増えているので、上級会員向けに提供していた「チェックイン時におけるプレミアムエコノミークラスへの無償アップグレード」を縮小し、航空会社に利益をもたらす搭乗者にいい席に座ってもらう、というのは理にかなっています。
今回のBid My Priceを含めた現時点のアップグレードについて図解してみました。

対象となる搭乗者・路線
ANAのホームページによると対象となる搭乗者・路線は
- エコノミークラス有償航空券を購入した方
- 旅程開始国が日本、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの何れか
- ANA運航の 日本 ⇔ アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリア路線
となっています。エコノミークラスの有償航空券という縛りなので、オークションへの参加については、予約クラスがLクラスやSクラスのような安い航空券やツアーチケットであっても対象になるものと思われます。
また、路線について、中国路線や東南アジアといった短距離路線は現時点では対象外となっています。こちらは、利用状況に応じて路線を拡大してくるものと思われます。
プレミアムエコノミークラスの特徴
4つの国際線座席クラス
国際線には、4つの座席クラスが存在します。一番上の座席クラスから順に「ファーストクラス」「ビジネスクラス」「プレミアムエコノミークラス」「エコノミークラス」となっており、プレミアムエコノミークラスは、上から3番目の座席クラスとなります。ボーイング777-300ERはこれら4つの座席クラスを全て要する機材になっており、その座席クラスごとの座席数は以下のようになっています。
座席クラス | 座席数 |
---|---|
ファーストクラス | 8席 |
ビジネスクラス | 52席 |
プレミアムエコノミークラス | 24席 |
エコノミークラス | 180席 |
合計 | 264席 |
この座席割当数を見て分かるように、プレミアムエコノミークラスの座席は、全体の1割程度の座席数しか存在しません。
座席
フルフラットになるシートは搭載されていないものの、シート間隔(シートピッチ)は、エコノミークラスの78センチよりも19センチ広い97センチになっています。鉄道における一般的な在来線特急の座席のシートピッチがだいたい97センチと言われているので、イメージがしやすいと思います。普段ビジネスクラスに乗り慣れている人からすると、プレミアムエコノミークラスの座席は物足りなく感じるかもしれないですが、普段エコノミークラスに乗っている人からすると、十分な広さの座席です。
また、座席には「寝具セット」だけでなく、「スリッパ」や「各種アメニティグッズ」も機内で準備されています。
サービス
プレミアムエコノミークラスに搭乗の場合は、座席以外に、
- 優先手荷物サービス(荷物の受取りが優先される)
- ANAラウンジの利用(搭乗者本人のみ)
- プレミアムエコノミークラス用のチェックインカウンターが利用可能
といったサービスを受けることができます。このあたりは航空会社の上級会員であれば搭乗クラスに関係なく受けられるサービスですが、上級会員でなくてもプレミアムエコノミークラスに搭乗することでも利用できます。
ANAラウンジについては、上級会員でない人も是非一度体験してみて欲しいです。今まで国内線のクレジットカードラウンジくらいしか利用したことのない人からすると感激者です。
対象都市と航空券料金の例
参考のために、対象都市と羽田・成田からの航空券料金(エコノミークラス・プレミアムエコノミークラス・ビジネスクラス)を調べてみました。
なお、検索条件は、
- 4月18日にフライト検索を実施
- 2018年9月1日に東京(羽田または成田)を出発、2018年9月8日に日本に到着する往復航空券のうち、日本発のフライトの料金
- 予約クラスは、現時点で利用可能な予約クラスのうち最安の予約クラス
- 指定都市までのANA運行の直行便(複数フライトがある場合はその中の最安値)
で揃えています。
行き先 | 距離 | エコノミークラス料金 | プレミアムエコノミークラス料金 | ビジネスクラス料金 |
---|---|---|---|---|
ワシントン | 6,762マイル | 73,280円 | 177,480円 | 388,580円 |
ニューヨーク | 6,723マイル | 77,040円 | 174,440円 | 390,940円 |
シカゴ | 6,283マイル | 77,980円 | 182,980円 | 409,980円 |
ヒューストン | 6,658マイル | 70,880円 | 187,980円 | 429,980円 |
シアトル | 4,775マイル | 65,380円 | 145,280円 | 284,780円 |
サンフランシスコ | 5,130マイル | 75,980円 | 165,780円 | 348,180円 |
サンノゼ | 5,162マイル | 61,980円 | 127,980円 | 286,380円 |
ロサンゼルス | 5,458マイル | 59,480円 | 148,080円 | 344,980円 |
ロンドン | 6,214マイル | 135,670円 | 199,170円 | 353,170円 |
パリ | 6,194マイル | 98,670円 | 199,170円 | 353,170円 |
フランクフルト | 5,928マイル | 135,670円 | 199,170円 | 353,170円 |
ミュンヘン | 5,866マイル | 135,670円 | 199,170円 | 353,170円 |
ブリュッセル | 6,060マイル | 93,710円 | 194,210円 | 343,210円 |
デュッセルドルフ | 5,959マイル | 93,710円 | 194,210円 | 343,210円 |
シドニー | 4,863マイル | 45,780円 | 106,780円 | 161,280円 |
どの路線も、エコノミークラスとプレミアムエコノミークラスの差額は、70,000円〜100,000円程度といったところでしょうか。
現時点でBid My Priceの結果に関する情報はないですが、おそらく落札価格の上限としては、
プレミアムエコノミークラスの料金 - エコノミークラスの料金
になると思います。というのも、これよりも高い金額で落札する人がいるとすれば、最初からプレミアムエコノミークラスのチケットを購入すると思われるからです。また、上限は上記の通りですが、実際には上限いっぱいまでいくことはなく、「プレミアムエコノミークラスの料金 - エコノミークラスの料金」の30〜50%程度の金額に落ち着くのかな、と思います。
自分ならどうするか?
プライベートで中長距離便に乗るときは、多くの場合がマイルを使った特典航空券を利用してしまうので、Bid My Priceを使う機会がなさそうです。もし使うとしたら、出張で中長距離便に搭乗するときになると思います。経費で賄えるのがエコノミークラス分の航空券(アップグレード不可料金)であるという前提に立つと、2〜3万円くらいの金額でプレミアムエコノミークラスにアップグレードできるとしたら、利用してしまうと思います。